『天穂のサクナヒメ』全曲解説以来で久々となりますが、楽曲解説記事を書きたいと思います。今回のテーマは11月4日から全国で絶賛稼働中の音楽ゲーム『CHUNITHM NEW』に収録されたオリジナル曲「創世のコンツェルティーナ」です。
前回の記事でも書いたように、ゲーム開始時に「NEW ep. I - Side.B」というマップを選択して何度もプレイしていくと遊べるようになります。私自身まだプレイできていませんが、近いうちにたどり着きたいと思っています。
曲調としては9/8拍子の牧歌的な北欧風民族音楽といった感じでしょうか。9/8拍子というと複雑そうですが、「タッカタッカタッカ」と3連符のリズムでハネている3拍子ととらえていただければわかりやすいと思います。ただし楽曲のキメの部分ではそのリズムに乗らないところもあるので、それについては後述します。
アコーディオンと同じ蛇腹楽器に属するコンサーティーナという楽器をフィーチャーした、かわいらしくもテクニカルな楽曲です。イラストのキャラクターは「リタ・カールステット」という名前で、自らコンサーティーナを発明して音楽を奏でる……という設定資料をいただきまして、それをもとに曲想を練っていきました。タイトルをコンツェルティーナとしたのは、カールステットという姓が北欧風だったため読みを合わせたためです。
CHUNITHMではキャラクターごとにストーリーがあるそうで、ゲーム上で自キャラを設定してCHUNTHM.NETにアクセスすればコレクション(有料)から見ることができるようです。(システム面はあまり把握していないので、誤りがありましたらご指摘ください。)
ストーリーの詳細については伏せますが、内容の一部では運命に翻弄されるようなところもあり、それを「創世の」というタイトルにこめています。ただし楽曲制作にあたっては、重さを出すのではなく演奏の楽しさや癒しを出してほしいという要望をいただきましたので、自分なりに解釈して制作していきました。
コンサーティーナが主役となりつつ、音ゲーとしてやり応えのあるものにしたいと考えたとき、参考になったのがスコットランドのインストバンド「TALISK」でした。
もちろんこんなスペシャリストの演奏を打ち込みで表現することは不可能ですが、曲として目指す方向性は明確になりました。メロディは大きな流れにして、それをなぞるだけなら低難易度の譜面になるものの、装飾音など細かいフレーズも全部弾くようにすると高難易度の譜面になる、といったような要素の多さも重視しました。
楽曲の始まりは「自ら発明したコンサーティーナの音色を試している」といったイメージで静かに始まりますが、やがてその音色に感化されて周りの人々が踊りだしたり楽器を鳴らし始めたりして、最終的にはセッションとして盛り上がっていく、という流れを想定しました。
思わず踊りだしたくなってしまうという表現のためタップダンスの音を入れたいと考え、いろいろと試行錯誤しています。これは特にアイルランドの「リバーダンス」の影響を個人的に強く受けているためです。
2016年に『悠久のリフレシア』に収録された「ディーナ・シーの踊り」でもタップを入れたいと思いましたが、ちょうどいい音色がなくカスタネット系の音を使いました。
今回はどうしようかと考えて、必要ならばタップダンサーを探して録音させていただこうかとまで思いましたが、宅録でできるならともかくこのためにスタジオを借りるとなったら予算的に厳しいので、さすがに無理がありました。その代わりにタップダンスが収録されている効果音を購入して、音を一音ずつ切り分けてマッピングしサンプル素材として使うことにしました。
伴奏はギター・ベース・ドラムを中心にチェロで低音、グロッケンシュピール(鉄琴)で高音を補い、民族色の強いイーリアンパイプで独特の味付けを加えています。Aメロ・Bメロはワルツのリズムに乗って軽やかに進んでいきますが、Bメロの終わりやサビの途中では前述したようにハネたリズムに乗らないキメの部分があり、音ゲー的なアクセントを意識しています。
サビから8小節までをMIDIにしました。音色は一部のみなので貧弱ですが、フレーズは確認できると思います。
concertina.mid
サビの部分はTALISKをイメージしたので非常に細かいフレーズになっていますが、曲としての盛り上がりと音ゲーとしてのやり応えを表現できていたら良いなと思います。マップを攻略してプレイできるようになるまで少々時間のかかる曲ですが、ぜひ多くの方に遊んでいただけたら嬉しいです。