2020年11月20日金曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第4回「標 ―しるべ―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第4回のテーマはワールドマップの曲「標 ―しるべ―」です。


トラブルの責任をとらされて鬼島に追放されたサクナ達。その島での探索拠点を選択する、ワールドマップを開いたときに流れるのがこの曲です。
島とはいっても非常に大きく、中央に土の洞窟、東に木の森、北に水の谷、南に火の山、西に金の砦と、五行説にもとづいた探索拠点が各地に広がっています。

音楽も雄大さを感じられるものにしたいと考え、尺八の大きなメロディを中心にストリングスで広がりを出し、ギター琴、笙などで伴奏を加えていきました。乗り物に乗るわけではなく徒歩で移動するのでテンポはゆっくりめにし、ストリングスや太鼓のリズムに乗せて、土の上を一歩一歩踏みしめて歩いていくような力強さを表現しました。
中盤からの展開部では田植え唄の第二主題をアレンジしています。この主題についての解説は第7回で詳しく書く予定です。

MIDIに起こしてみるとこんな感じになります。が、これでは尺八のメロディが貧弱で、単調に感じられるのではないでしょうか。

04_shirube.mid

動きの少ない大きなメロディに対して、表情が薄く棒読みのように聞こえてしまいますね。そこで、ソフト音源を使って音色を切り替えていくことで、演奏に表情をつけていきます。
私が今回使用したのは「ETHNO WORLD」。世界中のさまざまな民族楽器がその奏法ごとに収録されている音源で、ここ数年の間に作成してきた民族系楽曲のほとんどをこれ一本でまかなってきたため、非常に重宝しています。

この音源で上記のMIDIの尺八だけを鳴らすとこうなります。

04_shirube.mp3
アタックが強いもの、伸ばすと音色が変化するもの、装飾音がついたものと、フレーズに合わせてさまざまな音色を駆使していることがおわかりいただけると思います。こういった選択を他のすべての曲でも行っているわけです。
制作の舞台裏が少し見えてきたのではないでしょうか。


次回は土のダンジョンの曲「颪 ―おろし―」を紹介します。