2021年4月4日日曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第34回「龍 ―みずち―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第34回のテーマはラスボス戦の曲「龍 ―みずち―」です。
ここまで読んできた方はもうネタバレを気にしていないかと思いますが、今回は特にラスボス戦の演出にも言及しますので、これからプレイされる方はプレイ後に閲覧することをおすすめします。







とうとう深淵の大樹骸の最奥にたどり着いたサクナ。そこで待っていたのは創世樹の力を吸収し、「大禍大龍」と化した邪悪な神でした。
サクナは羽衣の力を解放し、これまでの道のりで培った絆を力に換えて全身全霊で決戦に挑みます。
クライマックスの盛り上がりを音楽でも表現するべく、圧倒的な存在感とそれに負けない熱い気持ちが伝わるように、特に気合を入れて制作に臨みました。

ラスボス戦ということで仕様が固まるのが開発後期のため、曲の制作時期も2018年の1月と比較的遅めです。特にこの曲の場合は単純に戦闘シーンだけではなく、その前に入る会話・演出シーンから曲を当ててほしいという要望があり、その絵コンテが届いてから制作に入りました。
なので実質的にはイベントシーン+戦闘シーンの2曲分を作っていると言えます。

その絵コンテの一部がこちら。文字が小さくて見えないと思いますが、各シーンの演出とセリフが書かれており、尺の秒数まで指定されています。


ラスボス戦のBGMはサクナが羽衣を投げ上げ、まばゆい光に包まれるシーンから始まります。冒頭のストリングスの速い動きで神々しさと高揚感を出し、その次のサクナが口上を述べるシーンではテンポ感を落として重厚感を演出します。尺八のメロディを中心にストリングス・ブラス・ギターが重なり、決め台詞がかっこよく決まるように盛り上げていきます。
そして盛り上がりが最高潮に達したところでギターだけを残して音が消え、今度は低音の分厚いブラスがまがまがしく鳴り響き、大禍大龍が戦闘態勢に入って、そこから戦闘シーンの曲へと移っていきます。

この一連の流れは音楽面ももちろんですが、開発側としてもこだわったところですので、ぜひこの流れを知った上でもう一度ラスボス戦の演出を見ていただければと思います。

戦闘に入ってからはツーバスのドラムベース、ギターが激しくリズムを刻み、そこに三味線も加わって和風メタルのような曲調になります。ストリングスが勿体をつけるようにじわじわと一音ずつ音階を上げて、後戻りの出来ない緊張感を高めていきます。そこまでがイントロ扱いで、尺八が入ってくるところからがAメロになりますが、このメロディは田植唄の第一主題を崩したものです。

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ブラスも加わって主題を繰り返したあと、「ダダダッ、ダダダダ」というリズムが特徴的なブレイクを挟んで、笛とストリングスが妖しげなフレーズを奏でるBメロに移ります。ドラムとベースがいったん手数を減らしてテンションに緩急をつけますが、ブラスが加わってから再び加速しサビへとなだれ込みます。
サビでは尺八と琴が和風なメロディを奏で、後半では笛とブラスが田植唄の第二主題で入ってきます。激しさを保ったままクライマックスを迎え、その後ループしてイントロに戻ります。

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「樹 ―いつき―」と同じくらい楽器数が多くて濃厚な曲ですが、「天穂のサクナヒメ」の長い物語の最後に至る2曲として、壮大で重厚な印象が残るように力を込めたつもりです。田植えアクションゲームという斬新なシステム、自堕落だったサクナが立派に成長していく感動的なシナリオとともに、物語を彩った音楽も長く印象に残っていてもらえたら嬉しいです。


次回は気持ちが安らぐイベントシーンの曲「和 ―なごみ―」を紹介します。