2020年11月13日金曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第1回「朧 ―おぼろ―」

PS4、SWITCH、PCで大好評発売中の『天穂のサクナヒメ』。「ガチの稲作シミュレーター」「攻略サイトは農林水産省」などと噂を呼び、発売当日にはTwitterでトレンド入りするなど大きな話題になっています!

音楽担当の私も盛り上げに参加できればと考え、バリエーションを含めて全42曲にもなる楽曲の制作秘話や、力を入れたポイントなどをブログに連載していきたいと思います。
第1回に取り上げる曲はゲームを始めて一番最初に流れる曲「朧 ―おぼろ―」です。


幻想的な背景が浮かぶ霧の中の梯を、出自不明な5人がうつむき歩いているという、印象的なシーンから物語が始まります。

話が横道に逸れますが、楽曲を作り始めた順番としては、まず最初にメインテーマとなる田植え唄の田楽版とオーケストラ版、序盤のダンジョン曲、村の四季(昼+夜)の曲、中盤のダンジョン曲といった感じで、開発が進むとともにイメージが固まっていった部分の曲を作っていきました。
イベントシーンの曲はメインシナリオができてからのため比較的後半に作りましたが、この「朧 ―おぼろ―」に関しては初期からイメージが固まっていたので、イベント曲の中では先に作った方です。

開発側からのテーマは「摩訶不思議」。停滞感はあるが絶望感や悲壮感はなくてよいとのことだったので、メロディのはっきりとした曲ではなく、和音を並べたアンビエント感のある曲にしようと考えました。
和風の曲で和音といえば雅楽で使われる笙(しょう)を連想しますが、それそのものの音色はなかなかないですし、使える和声も限定されてしまいます。
何も本物にこだわることはないので、似た音色を使ったり、2度でぶつかるような特徴的な和声を取り入れるなど、自由な発想で作らせていただきました。

リバーブを深くかけたシンセパッドで全体を埋め、霧の向こうから太鼓が聞こえてくるようなイメージで音場を作り、その上に笛、尺八、琴が自由な演奏を加えるといった順序で仕上げていきました。
打ち込みでリアルタイム録音をするときはクォンタイズといってタイミングをそろえることをしますが、この曲では整える程度で完全に拍にぴったりと合わせず、あいまいな印象が残るように工夫しました。

一部をMIDIデータにしてみましたので、音楽制作ソフト等をお持ちの方は開いてみてください。
01_oboro.mid

次回は都の曲「祓 ―はらえ―」を紹介します。