2020年11月24日火曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第6回「荒 ―すさび―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第6回のテーマは序盤の村の曲「荒 ―すさび―」です。


人間達と共同生活をはじめるサクナ。しかし田植えは思うようにいかず、仲間とは衝突ばかり。食べ物もひもじく苦しい日々が続きます。
そんなすさんだ暮らしをイメージした曲です。

前回の「颪 ―おろし―」は開発初期に作った曲ですが、この曲は当初のオーダーにはなく、開発後期になって追加されたためかなり後になってから作った曲です。それでも2018年の8月頃なので、すでに2年以上前の話になりますが。

村の曲も今後順次紹介していきますが、春夏秋冬の4曲に昼と夜の2パターンで合計8曲もあり、当初はそれだけで充分かと考えられていました。
しかし、それらのどの曲も村での安らぎや繁栄をイメージするなど前向きな曲調ばかりであったため、ゲーム開始直後のすさんだ生活には合わないということで、あらためて序盤用の曲を制作することになりました。

ギターがマイナーコードを、三味線が寂しげなフレーズをつまびき、尺八が心細げなメロディを奏でます。中盤から入ってくるストリングスのトリルは風がざわざわと吹く様子を表現しています。
曲調はそこまで似ていませんが、雰囲気としては「五木の子守唄」のような暗い民謡を参考にしました。

06_susabi.mid

聴きどころというほど派手なものはありませんが、特徴として挙げるならループ直前の最後のコードがDm9で終わることでしょうか。このMIDIデータの一番最後です。
メロディがナインスの音を奏でたまま解決せずに終わるので、聴いている側は不安で物足りない印象を覚えます。こういった不満足感を演出することで、安定した暮らしを渇望するサクナ達の心境に共感していただけたらと思いました。


次回は最初の田植えのときに全員で歌う「ヤナト田植唄」を紹介します。