インディーズ発のゲームとして快進撃を続け、昨日には全世界累計出荷本数が50万本を突破したことがアナウンスされた『天穂のサクナヒメ』。この連載記事では音楽担当の私、大嶋啓之が制作秘話や曲の聴きどころを解説していきます。
第7回ではこのゲームの根幹である田植えのテーマ「ヤナト田植唄」を取り上げます。
はじめにおことわりしておきますが、この曲はゲーム本編に密接に関わっており、解説を見るとネタバレになりかねません。
これからゲームをプレイするつもりの方は、プレイ後に閲覧することを推奨します。
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2020年11月26日木曜日
天穂のサクナヒメ楽曲解説 第7回「ヤナト田植唄」
これまで何度も書いているとおりこの曲が一番最初に作った曲で、作り始めたのは2015年の秋ごろになります。
『ヤナト田植唄』には3つのパターンがあります。トレーラーで使用されている朝倉さやさん歌唱のオーケストラ版、ゲーム序盤で人間達が声を合わせて歌うアカペラ版、そのアカペラ版に伴奏がついた田楽版です。
今回紹介するのはそのうちのアカペラ版です。ただし、今後の楽曲解説の中で田植え唄のフレーズをアレンジしていることを説明しやすくするために、アカペラ版では登場しないフレーズについてもここで紹介します。
田楽版とオーケストラ版についてはこの連載の終盤で改めて取り上げる予定です。
開発元のえーでるわいすに掲載された『ヤナト田植唄』の正式な歌詞はこちらです。繰り返しになりますが、ネタバレにはくれぐれもご注意ください。
この歌詞の中で、七・七・七・五の定型詩の部分を第一主題、(田楽版のみ)と書かれている部分を第二主題とします。MIDIと譜面に起こしたものがこちら。
07_yanatotaueuta1.mid
07_yanatotaueuta2.mid
ついでに、田楽版で登場する間奏の笛のフレーズはこちら。
07_yanatotaueuta3.mid
第一主題は田植えをしながら歌い、合いの手も入ることも想定した民謡調のもの。対して第二主題は五音音階ではあるもののメロディが弱拍から入ってくるなど民謡色は薄く、高音から入ってきて伸びやかに歌い上げる、心地良い和風ファンタジーを意識したフレーズとなっています。
これらのフレーズはゲーム中にさまざまな場面で形を変えて登場します。ゲーム序盤のアカペラ版では第一主題のみが歌われるため、第二主題の方はいろいろなところで耳にしても「聞き覚えのあるメロディ」としか認識されません。
ゲーム後半で田楽版が初めて流れたときに「このメロディも田植え唄の一部だったんだ!」と認識することで、「生活のすべてが田植えに直結している」というこのゲームの本質を感じ取っていただけたら狙い通りです。
次回は木のダンジョン曲「谺 ―こだま―」を紹介します。