『天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第9回のテーマは序盤のボス戦の曲「暴 ―あばれ―」です。
各ダンジョンの奥深くに潜む、その地域を統べる強大な鬼。サクナは島に平和をもたらすべく、自身の何倍もある巨大な相手に挑んでいきます。
ボス戦はなんといってもゲームの華なので、曲も戦いを熱く盛り上げるべく力を入れて作りました。これもかなり初期に作った曲で、順番で言うと田植え唄、土のダンジョンの次に当たります。オルガンを使っている点はダンジョン曲から引き継ぎつつ、ストリングスの音色で曲に重厚感を加えています。
開発側からの指示は「恐ろしさというよりは、やりごたえのある強大な敵。 掛かり出しでテンションが上げられるイントロにしてほしい」というものでした。ゲームが進むと他のボス戦の曲も登場しますが、この曲は序盤のボス戦ということもあり、恐怖感やおどろおどろしさといったものは控えて、迫力と緊張感を前面に出そうとしました。
その上でメイン楽器にしようと思ったのが「津軽三味線」です。
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津軽三味線は和楽器の中でもダントツにロックな楽器だと思っていて、打ち込みでの再現は難しいものの、それでも使ってみたいと思わせるだけの魅力がある楽器です。私自身も青森へ旅行に行って生演奏を聴きましたが、あの乾いた音の中に情念が渦巻くような粘りのある響き、独特の「さわり」と呼ばれるびりびりと震える音色はなんともたまらないものがあります。
ボス戦で津軽三味線が流れるゲームなんてそうそうないでしょうし、それが出来たら個性になると同時に、和の雰囲気と戦いの激しさを表現できると思いました。このアイデアをさらに推し進めていった先に、後半のとあるボス戦で流れる「魁 ―かしら―」があるのですが、その解説はまたそのときに。
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サビに入ると三味線に代わって琴が登場し、ストリングスと尺八とともに流麗なメロディを奏でます。途中にこの曲の「隠れ田植え唄ポイント」があり、第二主題をアレンジしたフレーズが出てきます。
ちなみに三味線と琴の音色は「yukinisuzume」さんのものを使わせていただきました。クオリティが高いのにフリーで配布されているというありがたいもので、大変重宝しました。
次回はボス戦勝利時の曲「誉 ―ほまれ―」を紹介します。