2020年12月13日日曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第12回「萌 ―めばえ―」「桜 ―さくら―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第12回のテーマは村の春の曲、昼の「萌 ―めばえ―」と夜の「桜 ―さくら―」です。


田んぼとともに生活するサクナ達にとって、四季の変化は非常に重要な意味を持ちます。季節ごとの太陽の傾きさえも緻密に計算されたこのゲームにおいては、冬のうちに稲を植えるか春になってから植えるかでも育ち具合が変わってきます。
そんな四季のうちで一番最初に作ったのが、春の昼の曲「萌 ―めばえ―」です。

といっても制作の裏話をしますと、実は開発の一番初期のプランでは村の曲は昼と夜の2種類だけの予定でした。この曲のラフを送った後で、「四季によって村の雰囲気が変わるので1曲でまかなうのは難しい」「かといって四季の昼と夜で8曲は負担が大きそう」という意見があり、こちらから「では四季の4曲を作って昼と夜でアレンジを変えるのはどうか」と提案し、それが通りました。
さすがに5年も前のことなので正確なやり取りまでは記憶があいまいですが、おおよそそういった経緯で村の曲の構成が固まっていきました。

この曲は「童謡・唱歌」のイメージで作っています。一般的なポップスがA-B-C(サビ)といった進行が多いのに対し、この曲はA-A'-B-Aといった進行になっており、「春の小川」や「花」といった有名な唱歌の進行を意識しています。Aメロの出だしが七五調になっているのもその影響です。

編成は4リズム+和楽器という基本の編成ですが、メロディに篳篥を使った点が特徴的です。「祓 ―はらえ―」のような雅楽風の曲以外で使うことはあまり考えたことがなかったのですが、この曲の素朴なメロディには合うように思いました。
ちなみに篳篥を使った曲はもう一曲あります。興味のある方は探してみてください。

A-A'-B-Aの進行が終わりかけ、コードがB♭(サブドミナント)→C(ドミナント)と解決に向けた王道の進行をしているにもかかわらず、直接F(トニック)に行かずE♭Fを繰り返します。この転調したような雰囲気を思わせる間奏部分に隠れ田植え唄ポイントがあり、が第二主題をアレンジしたフレーズを演奏しています。

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童謡のイメージの昼とは一転して、夜の曲はしっとりと落ち着いた大人な雰囲気にアレンジしました。ヒノエ島には桜は咲いていないようですが、月明かりの下で夜桜を見上げるような風流なイメージをこめてタイトルをつけています。

構成とメロディこそ共通していますが、楽器編成とコードは大きく異なり、テンポは同じでもリズムの感覚は半分になっています。
ボサノバのようにコードを爪弾くギターと柔らかい音色で包み込むようなエレピを背景に、三味線のメロディを尺八のサブメロディが支え、が雅な雰囲気を添えます。

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ゲーム内では常に時間が流れるため、村の中にいるときに昼から夜・夜から昼に変わると音楽も切り替わりますが、テンポ・構成・メロディが共通しているためアレンジだけがシームレスに変わるという、なかなか面白い切り替わり方をします。1日に2度しか聞く機会はありませんが、その瞬間はぜひ耳を傾けてみてください。


次回は食事シーンの曲「恵 ―めぐみ―」の梅・竹・松の3バージョンをあわせて紹介します。