2020年12月19日土曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第14回「汀 ―みぎわ―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第14回のテーマは水のダンジョンの曲「汀 ―みぎわ―」です。


島の北西部に位置する水惑いの谷や暴呪の湖など、水のダンジョンで流れる曲です。
このあたりから敵が強くなるとともにステージギミックもいやらしくなってきます。浮遊する水玉に振り回されて何度もやり直した方も多いのではないでしょうか。

ステージBGMは土のダンジョン曲「颪 ―おろし―」を基準として、各地域ごとにそれぞれ特色を持たせるように作っています。
「谺 ―こだま―」が木管楽器をメインに変化に富んだ曲だったのに対して、この「汀 ―みぎわ―」ではピアノをメインに据え、流麗で美しい曲にしたいと思いました。

各ダンジョン曲は開発初期に作りましたが、当然ながらその時点では先の方のダンジョンは出来ておらず、イメージイラストをもとに作成しています。
彩色画集付きの限定版をお持ちの方はコンセプトアートのページをご覧いただければと思いますが、これがとにかく美しい絵で、中でも水のダンジョンは草木の緑・水面の青・紅葉の赤と彩り鮮やかで、ダンジョンというより景勝地の絵画のようでとても印象に残りました。
そこで音楽の方もダンジョンのイメージにとらわれず、静かで落ち着いたものにし、和音と旋律の美しさをたっぷりと聴かせるような曲にしたいと考えました。

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太鼓タブラなどのエスニックなパーカッションとベースで基本のリズムを作り、尺八・笛・琴・三味線の和楽器陣がメロディを奏で、ピアノの伴奏で全体を包み込みます。左手のアルペジオは波のように、右手の和音は水面のきらめきのようなイメージです。
水を表現した曲というと第一にピアノを連想してしまうのは、ドビュッシーの「水の反映」やラヴェルの「水の戯れ」などの印象派の楽曲の影響ですね。

落ち着いた曲とはいえ、ずっとそのテンションだとアクションゲームとしては単調に聞こえかねないので、サビではストリングスドラムも加わり、メロディのレンジを広げてダイナミクスを持たせるように意識しました。
さらにサビ後の冒頭に戻る間奏パートでは、ピアノが自由に戯れるようなフレーズを演奏し、短いながらも鮮烈なアクセントを感じられるように工夫しています。

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次回はコミカルなイベントシーンの曲「転 ―まろび―」を紹介します。