『天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第15回のテーマはコミカルなイベントシーンの曲「転 ―まろび―」です。
新しい農具に大はしゃぎするシーンなど、ノリノリで楽しい場面で使われる曲です。サクナは喜怒哀楽がはっきりとしたキャラなので、ギャグシーンもとにかくはっちゃけて明るく作りました。
第3回で紹介した「騒 ―さわぎ―」と印象が近いところもありますが、向こうがてんやわんやの大騒ぎなのに対して、こちらは子供のイタズラっぽさというか、スケールの小さなおふざけ感を出そうとしました。
他のほとんどの曲では和風の五音音階[ド・レ・ミ・ソ・ラ]を使っていますが、この曲では同じ五音音階でも[ド・ミ・ファ・ソ・シ]の五音を使っています(正確にはキーがGなので[ソ・シ・ド・レ・ファ#])。
これは琉球音階と呼ばれるもので、沖縄民謡でよく使われるものです。音階の知識がなくても、一度聞けばすぐに「沖縄っぽいな」と感じるのではないでしょうか。
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和風のイメージで明るく楽しい曲と考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが沖縄のカチャーシーだったので、独特のリズムと音階を参考にしてノリの良いBGMにしたいと考えました。
途中には琉球音階ではないところもあって、その「チャンカチャンカ」というフレーズは徳島の阿波踊りっぽくもあり、短い曲の中にも遊び心を入れています(笑)
使っている楽器の面から見ても、沖縄を代表する楽器の三線(さんしん)が特徴的です。打ち込みでは「GARRITAN WORLD INSTRUMENTS」に収録されている三線の音色と、以前紹介したyukinisuzumeの三味線を重ねて使いました。
結構前に買った音源ですが、篳篥なども入っていますし、田植え唄に欠かせなかった太鼓や鉦などの打楽器もこれを使ったので、とても役に立ちました。
三線と打楽器の他にはドラム・ベース・ギターのリズム隊と、メロディ担当の笛・尺八・トランペット、それとチャルメラなどの癖の強い管楽器も入っています。
MIDIではちょっとわかりにくかったので、三線と打楽器のパートをmp3にしてみました。ハネるリズムの中で一箇所だけ入る三連符が、特に三線らしさを感じさせる部分だと思います。
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次回は夏の村で流れる曲、昼の「盛 ―さかり―」と夜の「蛍 ―ほたる―」をあわせて紹介します。