2020年12月29日火曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第17回「焔 ―ほむら―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第17回のテーマは火のダンジョン曲、「焔 ―ほむら―」です。


溶岩や毒煙など、今までとは危険度が段違いの火山ステージ。出てくる敵も黄泉神といった骸骨型のおどろおどろしい姿で、恐怖心を煽り立てます。
食事によって毒に耐性をつけるなどの対策をしないと踏破は難しく、攻略のための戦術が求められてくるところです。

開発側からは「困難な地を攻略する重さ」「危険な場所、自然の脅威」といったキーワードが提示され、それを基に構想を練り始めました。
まず最初に、メインとなる楽器を打楽器にすることにしました。火山が脈動して常に地鳴りが響いている様子を、和太鼓の力強い音色で表現したいと思ったからです。
むしろ荒涼とした感じを強調するために、和太鼓を中心とした打楽器だけの曲でも良いのではというアイデアも浮かびました。が、生演奏が使えるならともかく、打ち込みの音色だけで説得力を持たせるのは困難です。これについては後に村の冬の曲でも解説したいと思いますが、特に生演奏をシミュレートした曲ほどごまかしが効かないため、音色が少なくなるのを避けたくなります。

さすがに打楽器だけでは渋すぎるし、もっといろいろな情景を表現したいので、ベース・ギター・オルガンのリズム隊と尺八・笛・三味線・琴の和楽器陣、壮大さを盛り上げるためのストリングスなどの楽器で構成していきました。ただ「打楽器だけでも成立する曲にしたい」という発想が底流にあったことが、後に編曲に影響を与えてきます。

まずは和太鼓の音色で「ドンドコドンドコ」と鳴らしてみて、別の太鼓も加えてグルーブを作っていきます。他のダンジョン曲との差別化という意味でも、この曲はシャッフルのハネたリズムにしたいと考えました。
他の曲はだいたいメロディ→コード→リズムといった順序で考えていますが、この曲ではまったく逆で、リズムを作ってからコード進行を決めて、最後に津軽三味線のメロディを乗せるという感じでAメロを作っていきました。

20_homura1.mid

その次のBメロからは、リズムを引き継ぎつつメロディから作っていきましたが、そこでメロディ楽器に使ったのがイーリアンパイプです。
あまり聞き馴染みがないと思いますが、アイリッシュ音楽で使われるバグパイプの一種で、個人的にも大好きな楽器です。公開楽曲の中では「虚無への黙祷」や、他のゲームに提供した曲では悠久のリフレシアの「ディーナ・シーの踊り」などでも使用しています。
心を揺さぶるような響きを持った独特の音色で、火のダンジョンにおける自然の脅威や哀感を表現したいと思いました。

この曲のもうひとつの特徴として、第7回で取り上げた田植え唄の二つの主題+笛のフレーズをすべてアレンジしているという点もあります。
イントロの後に出てくる尺八が第一主題、そしてこちらのMIDIの冒頭の、終わり際に第二主題が入っています。第一、第二の主題は他の曲でも頻出しますが、笛のフレーズまで入っているのに気づいていただけたでしょうか?

20_homura2.mid

Aメロ・Bメロ・サビと進んで盛り上がりが最高潮になった瞬間、パイプと尺八を残して和太鼓だけの間奏になります。これが上に記した編曲に影響を与えた部分で、曲全体とはいかなくとも打楽器が主役になる部分を作りました。個人的にもすごく印象に残っていて気に入っているところです。
MIDIでは太鼓の音が再現しきれないため、せっかくなのでMP3も載せておきます。

20_homura.mp3


次回はとぼけたイベントシーンの曲「戯 ―おどけ―」を紹介します。