2021年1月18日月曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第22回「戦 ―いくさ―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第22回のテーマは金のダンジョンの曲、「戦 ―いくさ―」です。


フィールドマップ上では最後に踏破する、西の砦周辺のダンジョン曲です。
鬼達の統制が取れていて集団で襲い掛かってくる上に、これまで出てきていなかった強敵も姿を現します。探索度を上げるためには夜間に攻略することもありますが、その際の危険度はさらにはね上がります。
熊鬼のブロッキングからカウンターを食らったり、ボーッとしていると狢鬼の雷で体力を半分減らされたりと、何度最初からやり直したことか……。敵に囲まれて孤軍奮闘する中で、味方に向けて容赦なく大砲をぶっ放す兎鬼だけが唯一の味方です(笑)

ダンジョン曲は地域ごとにその特色を表す楽器を使っています。木のダンジョンは木管楽器、水はピアノ、火は打楽器、そして金のダンジョンは金管楽器です。これにはもうひとつ理由があって、この曲はオーケストラ編成にしたいという意識がありました。
ゲーム後半のダンジョンで緊迫感があるという点は火山ステージの曲「焔 ―ほむら―」と共通する部分がありますが、この2曲には大きな違いがあります。それは「焔 ―ほむら―」が自然に存在する脅威であるのに対し、「戦 ―いくさ―」は人の意思によって明確に敵意を向けられた脅威であるということです。

開発側のBGMリストにも「唯一の人工的ダンジョン。 これまでの冒険は調査が目的だったが、ここは明確に砦の主を倒すことが目的。 戦いの印象を強めに」とありました。
原始的な脅威を太鼓の乱打で表すとするなら、人為的な脅威はどう表現するべきかと考え、人の手によって組み上げられた音楽の代表といえば、やはりオーケストラなのではないかと思いました。

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他の曲では使ってきた4リズムをこの曲ではベースだけにして、ドラムセットの代わりに小太鼓で行進曲風のリズムを打ち出します。太鼓ブレイクビーツを重ねてグルーブを作り、拍子木でアクセントを加えています。
戦いをテーマとした曲だからこそ、イントロの一発目は法螺貝で始まりたいとこだわりました。ストリングスの小刻みなスタッカートで緊迫感を高め、金管楽器の厚みが迫力を増す中で、三味線・琴・尺八・笛の和楽器陣がメロディを奏で、和風の要素を強く印象付けています。

さすがにパート数が多くて制作には時間がかかりましたが、総力を結集した合戦の壮大さを感じていただけたら苦労が報われますね。

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次回は頽廃的なイベントシーンの曲「虚 ―うつろ―」を紹介します。