2021年1月23日土曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第23回「虚 ―うつろ―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第23回のテーマは不穏なイベントシーンの曲、「虚 ―うつろ―」です。


川に毒が流れ込んだり、鬼が怪しい動きを見せるときなど、サクナ達にとって良くないことが起こる不穏な場面で流れる曲です。
悪巧みをするシーンや黒幕について話し込んだりするシーンなど、地味ながらも耳にする機会はわりと多い方ですね。

いただいたBGMリストには「退廃」というテーマで、「人間界ではこんな酷いことがあったというシーン」「戦と飢饉の連鎖、合理と狂気の狭間で揺れ動く人々」という説明がありました。
ゲーム中では人間界の様子を直接見ることはなく、田右衛門やきんたの口から語られるのみですが、相当に酷い状況だったということは如実に伝わってきます。
音楽面では重苦しさ・絶望感を強調した曲にして、そんなイメージを表現しようとしました。

太鼓ベースで土台となるリズムを作り、その上にストリングスを重ねて圧迫感を出していきます。三味線が陰旋法で和風のフレーズを奏でますが、これは主旋律というよりは伴奏を意図しています。他の曲では津軽三味線をイメージして叩くような音色が多いですが、この曲では地唄の伴奏のような爪弾く音色を意識しています。
個人的には、曲の冒頭で「テレレン」と入ってくるフレーズが場面転換のSEのようで、緊張感を持たせる意味合いがあって気に入っています。

主旋律を担当しているのは篳篥(ひちりき)です。この連載の第12回で「篳篥を使った曲はもう一曲あります」と書きましたが、それがこの「虚 ―うつろ―」です。
ここまで読んでいる方はもうネタバレは気にしないと思うので書きますと、ヒノエ島で起こるさまざまな災厄には邪悪な神の力の影響が及んでいます。
篳篥は雅楽の楽器であり、神社で耳にすることが一番多い音色です。そんな神秘性を持つ音色が、重苦しい編曲の中でまがまがしいメロディを奏でているということで、邪神の持つ威厳を表現しようとしました。

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他にもお寺の鐘の音、法螺貝、クワイア(コーラス)などの音色をアクセントに加えています。
我が家やダンジョンの曲と違ってイベントシーンの曲はあまりじっくり聴くことはないかもしれませんが、各所にこだわりはあるので隅々まで楽しんでいただけると嬉しいですね。


次回は対石丸戦のボス曲「魁 ―かしら―」を紹介します。