2021年1月30日土曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第24回「魁 ―かしら―」

前回から少し間が空いてしまいましたが、『天穂のサクナヒメ』楽曲解説第24回のテーマは対石丸戦のボス曲、「魁 ―かしら―」です。


ゲーム開始直後から不穏な空気を漂わせていた石丸は、その後さまざまな経緯を経てヒノエ島の鬼達のボスとして登場します。
「戦 ―いくさ―」の解説で「人の意思によって明確に敵意を向けられた脅威」というのが、まさに石丸による脅威だったということです。
サクナや田右衛門の主張とはどこまで行っても平行線で、結局わかり合うことはできないのですが、その立ち居振る舞いや揺るぎない信念、見た目や渋いボイスなども非常に魅力的で、敵側ながらカリスマ性のあるダークヒーローとして描かれています。
音楽もそんな魅力を引き出せるように、強くて悪くてカッコイイBGMにしたいと思いました。

第9回の「暴 ―あばれ―」でも紹介したとおり、ボス戦では戦いの激しさと和の雰囲気を表現するためにロックと津軽三味線を組み合わせた曲にしていますが、「魁 ―かしら―」ではそのテーマをさらに先鋭化させ、津軽三味線が主役として暴れ回る勇ましい曲になっています。

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他の楽器はギター・ベース・ドラム・オルガンのバンド編成と、音の厚みを加えるために尺八・笛の和楽器やパーカッションストリングスなども加えていますが、あくまでも主眼となるのはロックバンドVS津軽三味線の一本勝負です。
他のボスは無限に湧くザコキャラを次々と召還してくるのに対し、石丸はひとりだけでサクナとの一騎打ちに臨みます。そんなタイマンバトルの潔さを表現するためにも、あまり捻った音作りや構成にせずストレートに伝わる曲にしたいと思いました。

そんな中でのちょっとしたこだわりポイントとしては、サビのちょうど中間で一瞬だけ音圧が下がるところ。このMIDIの13秒あたりです。

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激しい演奏の中でふっと息が抜けるように音圧が下がると、聞いている側には何が起こったのかと一瞬ハッとさせる効果があります。例えるならば、剣豪同士が激しく刀を打ち合わせた後、一瞬だけ刀を止めて相手を見るようなシーン。一秒にも満たないほんの小さな空白ですが、そんな緊張感に溢れた呼吸を表現しようとしました。


次回は緊迫したイベントシーンの曲「震 ―ふるえ―」を紹介します。