『天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第25回のテーマは緊迫したイベントシーンの曲、「震 ―ふるえ―」です。
鬼達の首領である石丸を倒して安堵したと思ったのも束の間、突如火山が噴火してとてつもない災害に襲われてしまいます。サクナの父である武神タケリビが倒したはずの邪神・大龍(おおみずち)が再び目覚め、島を混沌に陥れていきます。
そういった脅威が間近に迫ってくるときなど、切羽詰まった状況で使われる曲がこの「震 ―ふるえ―」です。
制作する上では映画音楽を意識したところもあって、特に重厚で緊迫感のある楽曲にしたいと思い、ストリングスと打楽器を中心に曲を組み立てて、その上に尺八・笛・琴の和楽器を加えていきました。
「焔 ―ほむら―」でも火山ステージの大地の脈動を和太鼓のリズムで表現しましたが、今回はまさに火山が噴火しているという危機的な状況に置かれているので、地面が震えてとても立っていられない様子をテンポの速い和太鼓の乱打で表現しています。
他にもティンパニやシンバルなどのオーケストラパーカッションや銅鑼で迫力を増し、気持ちを焦らせ追いたてるように鉦の音を加えました。
ストリングスはトレモロ奏法の音色を使い、絶えず落ち着かなく鳴り続けて緊張を強いていきます。要所要所でディミニッシュの和音を重ね、強烈な不満感や抑圧感を印象付けました。尺八は中音域で不気味な存在感を出し、笛はお囃子のようなメロディで煽り立てます。
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テンポの速い曲なので1ループは短いですが、笛が特徴的なAメロ、ストリングスが半音階で上下するBメロと、展開は意外とバラエティに富んでいます。特にその後のCメロは打楽器がいったん鳴り止んでストリングスと笛だけになり、嵐の中に突然訪れる不穏な静けさを表現していて、個人的に気に入っている部分です。
次回は絶望的なイベントシーンの曲「幽 ―かすか―」を紹介します。