2021年2月7日日曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第26回「幽 ―かすか―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第26回のテーマは絶望的なイベントシーンの曲、「幽 ―かすか―」です。



火山の噴火とともに鬼の群れが我が家を襲撃し、家屋はすべて崩壊。手塩にかけて育ててきた田んぼも灰に覆われてしまい、サクナ達は何もかもを失ってしまいます。
長い時間と手間をかけて積み上げてきたものの残骸を前にへたり込んでしまい、何の希望も見出せない。そんな作中で一番つらい時に流れるのがこの曲です。

シーンごとに使われる曲をすべて把握しているわけではありませんが、おそらくこの曲は上記のシーンだけでしか使われないのではないでしょうか。そういう意味ではレアな曲とも言えますが、あまりにも重苦しいので何度も聞きたい曲ではないですね。
作る上でも気が沈みますが、作業としてはそれほど苦労した覚えはありません。むしろギャグシーンとかの方が苦労したので、自分の趣向としてはこういう曲の方が向いているのかなと思います。

編成はわりと少なめで、ピアノ・尺八・琴・チェロに加えてシンセをイメージした音色を薄く流しています。テンポは一定の数値ではなく、実演を想定して細かく揺らぎをつけています。
琴と尺八がもの悲しいメロディを奏で、ピアノが陰鬱な伴奏を加え、チェロは低音で重みを与えて沈んだ雰囲気を強調しています。

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パート数の少ない曲ほど音色の説得力が問われるという点はこれまでにも何度か書いてきたとおりですが、この曲では特に尺八の表現に力を入れました。第4回の「標 ―しるべ―」の解説でも書いたように、尺八の音色をキースイッチで切り替えつつ表情をつけています。
曲の後半部分の尺八だけをmp3にしてみました。

32_kasuka.mp3

ブレス音や長音のかすれ具合、ビブラートなどさまざまな変化をつけて単調にならないように工夫しています。パート数の少ない曲だからこそ各個の音色を味わってほしいですが、とはいえあまり聞き過ぎると気が滅入ってしまう曲なのでほどほどに楽しんでいただければと思います。


次回は仲間と支えあうイベントシーンの曲「縁 ―えにし―」を紹介します。