2021年2月27日土曜日

天穂のサクナヒメ楽曲解説 第29回「咲 ―さかせ―」

天穂のサクナヒメ』楽曲解説、第29回のテーマはミニゲーム「花咲かサクナ」の曲、「咲 ―さかせ―」です。



火山灰を浴びて駄目になってしまった田んぼを復活させるべく、サクナ達はキーアイテムとなる「うつろいの玉」を求めてカムヒツキ様に直談判します。その代わりに命じられたのが、創生樹に群がるアブラムシくんを退治すること。これまでのダンジョン攻略とは異なり、創生樹の耐久値がゼロにならないように気をつけながらひたすら敵を倒していくミニゲームが始まります。

この曲はそのシーンのために書き下ろした曲ですが、実はこの曲が一番新しく、2019年の11月に作っています。他の曲が2015年から2017年頃を中心に作っているのに対し、この曲は当初のBGMリストにはなく、後になってから追加されたものです。
実際のところゲーム開発が終盤になっていないとミニゲームを入れる余裕もないでしょうから、この曲の追加発注が来たときにはいよいよ完成が近づいてきたかとワクワクしました。

とはいえこの曲は私の完全なオリジナルではなく、原曲が存在します。そもそも「花咲かサクナ」というミニゲーム自体に元ネタがあるのですが、ご存じない方のために一から解説します。
天穂のサクナヒメ』はえーでるわいすというインディーズメーカーが開発したゲームですが、もともとえーでるわいすはメンバーが二人だけの小規模なチームです。『天穂のサクナヒメ』では多くの企業や外注が関わりましたが、現在もその中心は変わっていません。
そして、その初期作品に『花咲か妖精』というフリーゲームがありまして、敵をぶつけて倒す爽快なコンボアクションゲームとして、サクナの大元となっています。



このゲームシステムをサクナに取り入れたものが「花咲かサクナ」であり、音楽も花咲か妖精のメインテーマをアレンジしてほしいという依頼に基づいて作りました。それが今回紹介する「咲 ―さかせ―」です。
原曲のmp3はこちらから聴くことができます。

ちなみに『花咲か妖精』はその後『花咲か妖精フリージア』というゲームに進化し、そこでもメインテーマがアレンジされています。
また、『花咲か妖精』自体をリメイクした『花咲か妖精 Ultra Encore』というゲームもあり、こちらにもそのアレンジ版の曲が使われています。PVで聴くことができます。



というわけで「咲 ―さかせ―」の話に戻りますが、アレンジにあたっては原曲のメロディとコード進行をできるだけ踏襲しつつ、「好きなようにアレンジして構わない」と言われたので細部に手を加えています。一番大きく変えたのはCメロの最後で、原曲ではトニックコードで終止していたところを、ドミナントコードのままDメロにつながるように変えました。Bメロもトニックで終止しているので、同じ形が続かないようにしたためです。
またワンコーラスの最後、ループに入る直前のコードも原曲ではAmでしっかり終わっていましたが、アレンジではB♭△7にして終止感をあいまいにし、ループしても飽きにくいように変化をつけています。

Cメロ途中からループ手前までをMIDIにしました。
35_sakase.mid

編成についてはドラム・ベース・ギター・キーボードの4リズムでビートを際立たせ、シェイカー・鼓・拍子木などの打楽器で盛り上げ、尺八・笛・三味線・琴の和楽器陣でメロディを奏でています。
全体的に躍動感が出るようにギターをかき鳴らし、ベースとドラムの手数を多くしました。特にループに入る直前のベースラインとドラムパターンは盛り上がる部分で、自分でも気に入っているところです。


次回は後半のボス戦の曲「怨 ―うらみ―」を紹介します。